さば観
おもにゲーム、おもにひとりごと、まれにネタ
泳ごう:(3)海
※コチラを先にお読みください
 ヘリに乗って数時間後、着いたのは小さな島だった。
 白い砂浜に、青い海。
 この島以外はひたすら海、海、海・・・・
 さすが伊集院家、プライベートビーチどころか、島まで持っているのか。
 こんな所で二人っきり・・・でもないけど、使用人さん達は別荘の方に居るから、浜辺には二人きりだ。
 なのに・・・・
「泳がないのか?」
 伊集院は来た時と同じ格好のまま。日傘をさして立っている。
「私、肌が弱くて直射日光には当たられないの」
 こ・・・ここまで来て、ソレって・・・
「私はここで見てるから、貴方は心ゆくまで泳いでね」
 にこっと天使のような微笑みで言われちゃあ、本当は泳ぐのが目的じゃなかったなんて言えるわけもない。
 くそ、こーなったら泳ぐぞ!
 軽く準備運動をすませると、欲求不満を発散させるように泳ぎまくった。

「・・・・・ふう」
 ひと息ついて空を見上げる。
 波にただよいながら、ぬけるような青を眺めていると、水着にこだわっていたことがバカらしくなってきた。
 身体を起こして浜辺を見ると、彼女が手を振る。
 ・・・・何やってんだよ、俺。
 俺は急いで伊集院の元に戻る。
「ごめん、一人にして。退屈だったろう」
「ううん、こうして海を見ているだけでも飽きないもの。私こそ、一緒に泳げなくてごめんなさい」
 って、逆に気を遣わせてどーする。
「そうだ、棒倒ししよう。棒倒し!」
 伊集院は首をかしげる。
「・・・ふたりでやるのは無理じゃないかしら。家の者を呼んでも足りないし」
「へ?」
「棒倒しって、体育祭で行われるような競技の事じゃないの・・・?」
「じゃなくて、砂の上に棒を立てて・・・・って、やったことない?」
 こくん、とうなずく。
「じゃ、実際にやってみようか。棒、棒・・・・」
 砂浜には棒切れ一つ落ちてなくて、別荘から借りてきて棒倒しをした。
 単純だからこそ、白熱した戦いがビーチパラソルの下でくりひろげられる。

「・・・うわっっ」
「ふふっ、私の勝ちね」
「くっそー、また負けた」
 さっきから俺が負け続けているような気がする。
「だって貴方ったら、危なくなってからも沢山取るんですもの」
「いや、こーいうのはイチかバチかの勝負をだな・・・・」
 くすくすと心の底から楽しそうに笑っていた彼女が、フッ、と遠くを見つめる。
「どうした?」
「・・・いえ、海って泳ぐのと眺めるぐらいだと思っていたけど、こうして楽しむことも出来るのね」
 そうか、プライベートビーチやら島があっても、一緒に楽しむ相手がいなければそうかもしれない。
 ましてや伊集院は、ついこの間まで女だというのを隠していたんだから。
「俺でよければ、いつでも付き合うよ。何だったら砂で城を作るのだってやってやる」
「あ、それは見た事あるわ。砂で雪像みたいに作るのよね」
 いやソレは・・・・ちょっと違うけど、ま、いいか。
 伊集院は砂を払って立ち上がる。
「喉渇かない? 何か持ってくるわね」
 別荘の方へと駆けていくのを見送る。
 水着こそ見られなかったけど、休日にこうして恋人と過ごせる喜びを感じた。

 気付くと陽は落ちかけていた。
 藍色とみかん色のマーブルがゆっくりと溶け合い、海を染めていく。
 俺はそれを、ボーっと見つめていた。

「・・・・お待たせ」
 差し出されたコップを受け取り、景色に目をうばわれたまま口をつける。
「・・・・・・ッ!」
 伊集院に視線を移し、ゴクンッとノドを鳴らしてジュースを飲んだ。
「陽も落ちてきたし、私も少し泳ごうかと思って」
 伊集院の白い肌と水着がオレンジ色に染まり、シルエットを浮かび上がらせる。
「キレイだ・・・・」
「本当・・・」
 伊集院は夕日を見ていたが、俺はそんな彼女をいつまでも見ていた。


    《 モドル 》

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